房総半島のヒト vol.1 大山宏子@三芳村

2016.05.16 (月) /

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「南房総へ単身移住し、人里離れた山奥で何やら農的暮らしを送っている女性がいる」

初めて彼女のことを耳にしたときのイメージは、「仙人」。

初対面は、南房総で行われた、とあるイベント。
泥酔した彼女を見たとき、それまでの「仙人像」はいとも簡単に吹き飛んだ。

それでも、会話のなかに時折見え隠れする彼女独自の哲学や人生観に、
人間味溢れるなんとも力強い女性像の一面を垣間みた。
好奇心が一気に駆り立てられる。

南房総市三芳村在住。
「びろえむ」の名称でその名を房総半島に轟かせる、大山宏子(以下、びろえむ)さん。

金谷に住む人との交流も深く、イベントや地元行事に定期的に顔を出しては、
夜な夜なスピリチュアルトークからチャラけた話しに花を咲かせては、相変わらず酔っぱらっている。
それでも、老若男女問わず、初対面の人にも強烈な印象を残しては、風のように去っていく。
尖りつつも、物腰が柔らかい、何とも不思議な女性だ。

「しへえどん」にも定期的に、採れたて無農薬野菜を配送してくれる。
もともと、調味料や食材にこだわり抜いたしへえどんの定食メニュー。
びろえむさんの野菜を使用することによって、見た目や味は一段と進化する。
「しへえどん飯」たらしめる所以の一つだ。

2年前に彼の地へ移住し、無農薬野菜などを育てる傍ら、
自宅の「びろえむ邸」をイベントスペースや宿泊場所として、
地元民や都会からの来訪者に開放している。

「この場所を通して、立体的な人間関係を構築していきたい」とびろえむさんは語る。

立体的な人間関係―。

人が集い、つながり、円(縁)となる。
その円が、螺旋を描きながら球体へとカタチを変えていく、そんなイメージだ。

「ここを拠点に何かが生まれて、そのつながりが螺旋状に広がり、大きくなる。
球体の軸が自分や自分たちのいる場所だとしたら、螺旋の先にあるのは自分とは関係のない、
別の人たちから生まれたつながりや創造物であれば素敵ですよね」

“感覚”や“インスピレーション”を大切にしているというビロエムさんは、
未来のあるべき自分像と自身を取り巻く環境のイメージ図を感覚的に描写してくれた。

人のつながりを可視化するのは難しいが、彼女の話しを聞けば聞くほど、
淡いイメージの解像度はあがる。

三芳村への移住の決め手を伺うと、
「これといった理由はありません。これまでも直感で決めてきたし、
偶然やいろんな流れが重なりあってこの地へやって来た感じ。
何年後にどこで何をしたいという具体的なプランを持ってやってきたわけでなく、
その時々でやりたいことだけを考え、選んだことを信じて実践してきた」と教えてくれた。

頑張りすぎず、肩の力を抜いて、出会いも発見も欲求も、全て自然の成り行きに任せてみる。
人生なんて、なるようにしかならない。でも、楽しもうと思えば、楽しい。

そんな彼女のスタンスが、いつしか、
地方へ移住してくる強者たちの憧れともなるライフスタイルを築き上げた。

「この地で、いろんな人やモノに出会い、それを常に楽しいと思える自分でいたい」

パソコンは持っていない。テレビも映らない。来年は携帯電話も手放そうと考えている。
都会のライフスタイルを基準に考えたら、不便な暮らしかもしれない。

それでも、自分の信じることを、心をこめて丁寧にやっていく。

地に足のついた、人間らしい暮らしを実践する粋な人たちが今、南房総には集まりつつある。


※ 「房総半島のヒト」 は、南房総を中心に、房総半島で活躍するヒトを紹介していきます。
金谷のまちやゲストハウス 「しへえどん」 とのつながりにも着目しつつ、鼓動する房総半島を紹介する企画。

text by: Kenji Takeuchi
photo by: Takashi Suga

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